忘れられた漫画の不吉な予言が再び注目を集める

1999年に発表されたあまり知られていない漫画『私が見た未来』が、突如として日本の社会意識に再浮上した。作者の龍樹リョウ氏が自身の予知夢を記録したとされるこの作品は、現在2025年7月に予測される大災害についての警戒感の高まりとともに注目を集めている。

忘れられていたページから広がるパニック

漫画の初版カバーには、龍樹氏の分身キャラクターがさまざまな予知を描いた絵葉書に囲まれている様子が描かれていた。その中には「2011年3月：大災害」と不気味に刻まれた一枚も含まれていた。2011年に実際に東日本大震災が発生した後、絶版状態だった単行本はコレクターたちの争奪戦となり、価格が高騰した。2021年に発売された『完全版』では「2025年7月に2011年を上回る大惨事（具体的には津波の規模が3倍）が起きる」との予測が追加され、さらに騒動に拍車をかけた。

観光業への波及効果

この再注目は旅行計画にも影響を与えており、特に公式翻訳版が存在する香港から日本への渡航に変化が見られる。香港航空は仙台便を全面的に運休させ、大灣航空も仙台・徳島便を減便。宮城県知事はこうした懸念を「非科学的」と一蹴しているが、騒動は確実に特定市場に影響を及ぼしている。

フィクションと現実の境界線

6月27日に公開されたホラー映画『2025年7月5日 午前4時18分』が龍樹氏の予言を取り入れたことも、騒動に劇的なタイミングを提供した。残念ながら、SNS上では映画の日付と龍樹氏が示した「7月」という曖昧な時期が混同され、出版社のアスカ媒体からは説明文書が発表される事態となった。

恐怖の科学的根拠

龍樹氏の予測に科学的根拠はないものの、それは正当な懸念と結びついている。地震学者たちは、南海トラフ巨大地震が30年以内に70-80%の確率で発生すると試算。政府の想定では最大30万人の死者が出る可能性がある。気象庁は「地震の正確な予測は不可能」と断言し、こうした主張を「詐欺的」と断じている。

議論が続く中、龍樹氏自身は「専門家の意見に基づいて適切に行動を」と自制を促している。しかし『完全版』が100万部を突破した現在でも、この作品は世界有数の地震多発国における防災意識を喚起し続けている。